Beethoven String Quartet c-moll Op.18-4
第一楽章(Allegro ma non tanto)
ファーストヴァイオリン
小節 | 事故 | 推定原因とコメント |
全体 | 緊張感のみなぎる楽章です。テーマの演奏がキーです。最初の12小節ですべてが決まってしまうような気がします。アンサンブルでてこずるところはありません。ファーストヴァイオリンがしっかりとイニシアティブを取ることが要求される楽章です。 | |
1−12 | 音程 | 最初のG音はレガートです。pで始まります。sfはその音だけに作用しますから、ピアノはしっかり保持されます。11小節からcresc.が始まりffに達します。5000cc位の高級車のスタートに似ています。静かにスルスルと発車してあっという間に100kmを超えているという感じなのです。特に最後の(音量の)加速がすごいのです。
演奏の場合にはテンポは一定です。チェロ氏がのんきに刻み始めたらもうおしまいです。最初からクライマックスと同じテンポでスタートさせます。 ファーストヴァイオリンの音程が外れたりすると、走行中にパーツが落ちたようなもので全くさまになりません。メンバーを失望させないためにもがんばりましょう。緊張感のあるpで開始してその緊張をどんどん高めてゆき爆発させるような演奏は、気持ちではわかっていてもなかなかできません。満足するまで全員でさらう以外に手はありません。 |
66-68 | 難所 | 腕の見せ場ですからがんばるッきゃありませんな。ほかに173-176、190-193、206-207も大変です。
このフレーズには落とし穴があります。66-67小節は皆様がよくさらうのですが、68小節の第一音のB音で、弓がタタタと弾んでしまったりします。ここの音をしっかり落ちつけるために大分苦労しました。高い音がキッチリ弾けると喜んでしまって。つい、、、。 |
全体 |
わがまま |
この楽章だけは私の好きなように弾かしてくれとわがままを言ってみてはいかがでしょう。構造上自由にアゴーギグをつけられるところが何箇所かあります。個性的に仕上げてみるチャンスです。 |
セカンドヴァイオリン
事故 | 推定原因とコメント | |
全体 | てごわい | 落ちるようなところはないのですが、なかなか手ごわいと思います。重音で綺麗な響きをだすのは難しいことです。また弓を飛ばしたスタカートで弾くところが多いのでファーストヴァイオリンがテンポを揺らした場合は微妙にコントロールしないと縦の線が合わなくなってきます。 |
112-122 | 難しい | 112小節からはチェロのソロでVn2が伴奏して行くわけですが、単純な伴奏以上のものがあります。チェロはただ一度のソロらしいソロなので力みかえって鼻の穴全開です。そのくせ、しくじるのです。そんな場合はセカンドヴァイオリンを聞いてもらいましょう。120小節からファーストヴァイオリンがメロディーをとりますが、ここでは控えめな美しい歌を歌いましょう。 |
148−157 | 原因はあなた |
和音が厚いので適当に弾けば良いと思ったら大間違いです。チェロとヴィオラはごく単純な音しか出していません。音程など外れようが無いくらいです。ですから和音が響かないということでチェックが始まるとすぐに犯人がばれてしまいます。3重音の下の音がヴィオラと重なっているので抜いてみるのも手かもしれません。 |
ヴィオラ
事故 | 推定原因とコメント | |
全体 | てごわい | セカンドヴァイオリンに良くにています。かなり難しい表現が要求されます。
調弦をしっかりやってください。特にG,Cの開放弦はチェロやヴァイオリンと合わせてください。この楽章では特に重要ですから楽譜の頭にでも「G,C調弦」と大書しておきたいくらいです。 |
11-13 | 役割の認識 | 11小節からセカンドヴァイオリンのパートがヴィオラに移って、ヴィオラはニ重音になります。そしてヴィオラとチェロで和音を構成して、セカンドヴァイオリンにより補強されたメロディに対抗します。そしてffまでもって行き、ffを続けるわけです。ベートーヴェンの気合がスコアからあふれ出ていますが、15小節のVn2,Vaのユニゾンの書法などベートーヴェンの各奏者への信頼が伝わってきます。
ヘッポコな音で弾いたらベートーヴェンに殴られそうです。 |
チェロ
事故 | 推定原因とコメント | |
全体 | やさしい。 | これだけの内容の曲で、このやさしさは信じられません。完璧な演奏をする絶好の機会です。発想記号を完全に再現し素晴らしい演奏をしましょう。 |
112-119 | 見せ場 | とはいえpですから余りがんばりませんように。 平常心で乗りきれば良いのですが、「事故多発地帯」であり「死亡事故発生現場」なんて悲しい立て札が立ちませんように。 |
お願い | 音楽的である限り、ファーストヴァイオリンに自由に弾かせてやる努力をしてください。 |