目次に

Mozart String Quartet  K168

弦楽四重奏というか、合わせものの基本となるものが心地よい形で完全に含まれています。この曲を初見などで弾いてフレーズの入りや、組み合わせがごく自然に感じられれば、アンサンブルの基礎がしっかり身についているといえるのだと思います。数えるということをしてはならない曲です。

それにしても、楽しくて美しい曲です。

ファーストヴァイオリン

1楽章 Allegro 

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   事故なんか起こりそうにありませんが、それでもいくつか有ります。ちょっとさらえばクリアです。  
1-9 落ちる 数えていれば落ちませんが、きわめて自然なテーマが実は不規則な「3+2+2+2」小節の構造をしています。一杯に響き渡る最初の3小節に対して残りの6小節が絶妙なバランスを保っています。ファーストヴァイオリンのしっかりしたリードが必要です。テーマの面白みを味合わず、数えて入るのでは弾かないほうがましかもしれません。 K168-1-1
31 落ちる 練習番号Bですが、記譜法の問題で初見で弾くときにはここで躓きます。(またはセカンドに助けてもらいます)。理由は2拍目の後打ちの8分音符をつなげて書いてあるからです。2度目からは誰も落ちてくれないかわいい落とし穴です。 K155-1-31
53-55 落ちる スコアは示しません。数えずに入るところです。 K155-1-53


K168-1-1


K155-1-31


K155-1-53

 

2楽章 Andante

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体 やや危険 見事な四声部の厳格なカノンではじまります。ベートーヴェンの後期をおもわせます。25小節からのクレッシェンドを伴った結尾には天才を感じさせます。  
15 落ちる セカンドヴァイオリンの入りが分りにくいので、知らないとごく自然に分らなくなって落ちます。弦楽四重奏全体でリズムを共有して、自然に入るべきところです。ここも数えて入るよりも、数えなくて落ちるほうが音楽的です。詳しく説明しますと、13小節は器楽的なフレーズの終わりと、声楽的でポリフォニックなフレーズの始まりをかねております。13小節の第2ヴァイオリンの3拍目のC音から次のフレーズが始まります。そして14小節には頭の拍がなくただC音が弱く延びているだけなので、他のパートは戸惑います。そして「多分、セカンドヴァイオリンの最後の拍がのびたのだろう。」と思ったら一巻の終わりです。ガイドを書いておくべきでしょう。 K168-2-15


K168-2-15

 

3楽章 Menuetto

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   落とし穴はどこにもありません。  

 

4楽章 Fuga (Allegro)

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   迫力のある立派なFugaです。弦楽四重奏曲のフーガになっているからすごいと思います。フーガの教科書にはバッハが紹介されますが、この曲を例にとったほうが良いと思うくらい模範的にかつ芸術的に作られています。テーマの入りなども文句なく自然ですから落ちるわけがありません。弓使いや、弾きにくいところもありますから練習は必要です。  

 

セカンドヴァイオリン

1楽章 Allegro 

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   大変気持ち良く演奏できます.練習番号B〔31小節)のところは、ペーター版ではなぜか、セカンドだけは分りやすい記譜をしていますから落ちません。ファーストの項参照(ベーレンライター版はファーストと同じ記譜です。)  

 

2楽章 Andante

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体 やや危険 数えるよりもしっかりガイドを書いてください。そうすれば落ちるはずがありません。  
15 他が落ちる 練習番号Aのところです。ファーストヴァイオリンの項を参考にしてください。頭をはっきり弾けと要求されたらノーと言いましょう。実質的にはDes−Cのスラーは止めるべきでしょう。ペーター版では13小節ー14小節のCのタイをミスプリでしょうが落としています。これはひどい間違いです。 K168-2-15


K168-2-15

 

3楽章 Menuetto

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   落とし穴はどこにもありません。  

 

4楽章 Fuga (Allegro)

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   テーマの入りなども文句なく自然ですから落ちるわけがありません。弓使いや、弾きにくいところもありますから練習は必要です。  

 

ヴィオラ

1楽章 Allegro 

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   事故なんか起こりそうにありません。  
42 自信をもって 展開部はヴィオラからです。ためらわずに出ましょう。 K168-1-42


K168-1-42

 

2楽章 Andante

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体 やや危険 問題はないと思いますが、重要なところはガイドを書くと安心できます。参考にファーストヴァイオリンの項をみて練習番号A(14小節)の入りを確認してください。ヴィオラが上手く入れば問題は起きません。  

 

3楽章 Menuetto

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   落とし穴はどこにもありません。  

 

4楽章 Fuga (Allegro)

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   迫力のある立派なFugaです。入りが自然なので苦労はないと思いますが、45-46小節なんかはテンポが上がると難しくなってきます。 K168-4-46


K168-4-46

チェロ

1楽章 Allegro 

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   文句なしに楽しめます。アンサンブル上の不安などどこにもないと思います。それに大変弾きやすいです。  

 

2楽章 Andante

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体 やや危険 問題はないと思いますが、重要なところはガイドを書くと安心できます。参考にファーストヴァイオリンの項をみて練習番号A(14小節)の入りを確認してください。ヴィオラが上手く入れば問題は起きません。  

 

3楽章 Menuetto

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   落とし穴はどこにもありません。  

 

4楽章 Fuga (Allegro)

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   迫力のある立派なFugaです。入りが自然ですし、ポジションの移動も少ないので苦労はないと思います。72小節は主題の再提示でチェロから始まります。92小節は主題が反転されておりそれを真っ先に提示するのもチェロです。しっかり練習をしましょう。

この曲をつかって、みんなでフーガ形式のおさらいをすると良いかもしれません。テーマの提示法、属音でテーマが始まる場合の規則から、ストレッタ、オルゲルプンクトなど主要なものは全て出てきています。

ちょっと気になったのRequiemのフーガを見てみたのですが、恐くなって逃げ出してきました。モーツァルトのフーガはあのようなところに行きつき、ベートーヴェンのフーガはフーガ・グロッセに行きつきますが、モーツァルトの方が怖いですね。

K168-4-72