目次に

Mozart String Quartet  K170

この曲の中で、一番楽しい楽章は4楽章でしょう。でもアンサンブルは難しく、全体が分っていないと落ちまくります。

1楽章は変奏曲でアンサンブルはやさしいのですが、きっちり合わせるとなると弦楽四重奏特有の悩みが出てきます。

2楽章は普通のメヌエットです。あまりモーツァルトの気合が入っているようには見えません。

3楽章はUn Poco Adagioです。この速さは一番倍テンポ等が起こりやすい速さですが、幸いこの楽章ではあまり問題はないと思います。

4楽章は曲を知らない仲間が集まっての初見では大変だと思います。第1ヴァイオリンはかなり弾きにくいですし、おどけたテーマは間違いやすく、それにしつこいシンコペーションの駄目押しもあります。

ファーストヴァイオリン

1楽章 Andante 

  事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   ゆったりした楽章ですし、嫌らしいところもありませんから楽しく弾けます。  
15 しばらく、間があきます。きっちりとでるためにはVn1の明確な合図が必要です。厳しい練習をしましょう。17小節の変奏曲への入りは少し間を置くのが常識です。無神経にどんどんいってしまっては無作法というものです。 k170-1-15
32 楽譜がちがう? 示してある楽譜はペーター版ですが、ベーレンライター版はリズムが違います(括弧内)。ベーレンライター版で演奏すると大分弾きにくくなります。そのほかにアーフタクトの16分音符が32分音符になっているところもあります。32分音符の場合にはぴったり合わせると神経の消耗具合が違ってきます。

楽譜のほかの部分を参照するとベーレンライター版のほうが納得できますし、演奏効果もあがります。

K170-1-32
35 誰にあわせる? 35小節(練習番号C)ですがVn2,Va,Vcは危険な3連音符をみんなで刻みます。いずれ合うさ!とのんびり構えれば別ですが、Cの入りからぴったりと合っていると大変気持ちが良いものです。ここでVn1の重要な役割があります。Vcの刻みにぴったり呼吸を合わせるのです。

ヴィオラが美人だからなどと浮気をしてはなりません。さもないとVn2,Vaは誰に合わして良いのか分らなくなります。演奏は運転の同じですからどの標識をみるかが決まっていないと危なくてしかたありません。

Vcの刻みに呼吸を合わせるというのは、Vcの刻みに合わせるという意味ではありません。同じ音楽を共有するということです。
その結果として、刻みとメロディーがぴったり合うということです。機械的に刻まれた刻みにVn1が一方的に合わせるということではありません。

K170-1-32


k170-1-15



K170-1-58

2楽章 Menuetto

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   ケアレスミス以外はおこらないと思います  

 

3楽章 Un poco Adagio

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   Un poco Adagioというのはそんなに遅くないです。でも余り気持ち良くはじめると16分音符が意外に早くなってびっくりしたりします。  
55 惨め これと同じメロディーが前半にも出てきますが、問題はこちらのほうでしょう。55小節は普通第3ポジションで弾くのでしょうが小指を伸ばしてとるgisは音程がとりにくいです。そんなことを考えているうちに弾き損なって惨めなエンディングということにならないようにしましょう。Vn2がオクターブで弾いてますから、走ったりするとすぐばれてしまいます。(Vn2は弾きやすいのです) K170-3-55


K170-3-55

4楽章 Rondo (Allegro)

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   とても楽しい楽章ですが、弾きにくいところがあります。3小節くらいの休みでも入りにくいところはガイドを書いたほうがよいと思います  
8 もつれる 8小節からのパッセージを初見でこの通りの弓使いで弾ける方は余りいらっしゃらないだろうと思います。練習してもかなり難しいパーセージです。編集者が好みでつけたボーイングもかなりあり、それならば原典を参照して何も書いていなければ自由にボーイングできます。しかし8小節からのパーセージはモーツァルトがこのようにフレージングしたもののようです。(他の版も同じになっています)覚悟を決めてしっかり練習しましょう。

さらにここの伴奏はVn2だけです。(Va,Vcは高みの見物です。)

K170-4-8
24 落とし穴 譜例に部分的に示しましたが、24小節からシンコペーションが始まります。ここではチェロ以外の全てがシンコペーションの試練をうけます。Vn1の重要な役割は演奏を止めないことです。そうはいっても自分のパートがないところで止まってはての施しようがないかも知れません。

しっかりとガイドを書いておくことをお薦めします。日頃の練習では誰も間違えないところで本番の事故は起こります。最小限に食い止める準備をしておいてください。演奏が止まるということは人身事故だと思いましょう。

K170-4-24
81 惑わす 81小節からVn1は長いソロに入ります。83小節からは完全名ソロで伴奏も間の手もありません。Vn1は気楽で良いのですが、自分の入りを待っているメンバーの気持ちになってください。89小節で何の合図もなく主題に入るとはじめの拍が合わない可能性があります。 K170-4-81

 


K170-4-8


K170-4-24


K170-4-81

 

セカンドヴァイオリン

1楽章 Andante 

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   落とし穴らしいところもなく、難しいところもないだろうと思います。  
35 アンサンブル上難しいと思うのは、35小節の入りです。Vn1がどのようなテンポで入ってくるか予想できないこともあり、チェロと同じ刻みをするわけですが、神経を使います。Vn1が横にいますのでVn1に合わせたくなりますが、そのようにするとVcと合わなくなってしまいます。 K170-1-35

 
K170-1-35 

2楽章 Menuetto

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体 平凡なメヌエットであり、難しいところはありません。

 

3楽章 Poco Adagio

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   平穏だと思います。16分音符のパーセージが出てきますすが、Vn1とオクターブです。それほど弾きにくいパッセージでもありません。それよりも28小節から始まる美しいパッセージの練習をするほうが良いでしょう。 K170-3-28


K170-3-28

4楽章 Rondo(Allegro)

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体 危険注意 平穏無事にここまできてからが少々大変です。曲をよく知ることが大事です。  
  Vn1が走る ここはVn1,Vn2だけです。Vn1がヨレたり、走ったりします。しっかりとした足取りで弾きましょう。 K170-4-8
24-48 大変 24小節からはシンコペーションが嫌いな方には地獄巡りみたいなものです。四分音符で書かれた場所もお相手はシンコペーションです。救いはフレーズが4小節単位ではっきり切れていることです。したがって4小節のブロックが6回連続するだけなので、曲をしっていればカムバックできます。(Vn1で掲示したスコアを見てください。(K170-4-24))、思ったよりも単純です) K170-4-24
124-127 実力を見せましょう Vaと一緒に16分音符を強奏します。デターシェで目一杯の音をだす華やかなところですが、テンポが速いですから大変です。よほど弾きこんでいないと効果は出ません。 K170-4-124


K170-4-8



K170-4-24


K170-4-124

ヴィオラ

1楽章 Andante

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   問題のない楽章です。でもAndanteという楽章が一番倍テンポや半分テンポが起こりやすいのです。注意しましょう。  
意外? パート譜だけでは48、49小節がヴィオラのソロだなんて分りません。ここはテーマの15小節目にある長い休止に対応するところです。初見のときはびっくりします。 K170-1-48


K170-1-48

2楽章 Menuetto

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   安心して演奏できます。  

3楽章 Poco Adagio

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   ヴァイオリンの伴奏を行なっているような楽章です。やさしいと思います。ヴィオラにも良いソロが回ってきます。  

 

4楽章 Rondo (Allegro)

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体 危ない 譜面はやさしいですが、きっちり弾く力が必要です  
24 弾きにくい お相手はシンコペーションです。このようなところでしっかりと頭を示してゆくことは、シンコペーションを弾いているパートよりも難しいと思います。 K170-4-24
105 楽しい このヴィオラのソロは最高にたのしいですね。本当にヴィオラらしいです。 K170-4-105
124 実力を見せましょう 124小節からコーダですが、相当基本がしっかりしていないとこのようなところをデターシェで強奏するのは難しいことです。しかも縦の線がVn2と揃っていないと効果は出ません。  K170-4-124


K170-4-24


K170-4-105


K170-4-124

チェロ

1楽章 Allegro 

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   第1楽章はVn1の伴奏に全員がまわっています。基本どおりですがバスとしての確実な演奏が必要です。  
15 緊張して とにかくVn1と一緒に入ってください。 K170-1-15
35 ばらつく Vn2,Vaも3連音符を刻みます。Vn2,Vaはチェロに合わせます。チェロはVn1のメロディーと完全に同期してなければならないのです。バスの重い使命です。 K170-1-35


K170-1-15


2楽章 Menuetto

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   居眠り以外の事故は起こらないでしょう。  

3楽章 Un poco Adagio

  事故 推定原因とコメント 楽譜
全体   美しいメロディにうっとりしても、本当に寝ちゃわないでください。  

4楽章 Rondo (Allegro)

小節数 事故 推定原因とコメント 楽譜
全体 止まるぞ VCが落ちるととまってしまいます。  
3 バラバラ ここでチェロが落ちてはいけません。Vn1のメロディとの関係を(K170-4-24)頭に叩きこんでください。 K170-4-3
24 支える 練習番号Aです。ここからしばらくの間は完全にVn1と同期が取れるようにしておきます。例えばVn2がシンコペーションをしくじった場合に応急の処置として、Vn1がVn2に合わせてしまう場合があります。このような場合には1,2,3と数えているVcは何の役にも立ちません。即座にVn1に合わせていかなければなりません。そのような芸当が出来る人にはガイドは必要ありませんが、少しでも危ないと思えば、しっかりとガイドを書きます。

私は「危ない」と思った場合には、徹底的にガイドを書くことにしております。自分自身が危なっかしいこともありますが、他のパートが危ない場合もあります。とにかく事故は未然に防がなければなりません。

 
66 支える 初めの小節が66小節ですが、ここからCまでもチェロが落ちると全体が危なくなります。ここまでガイドを書きこめば先ず誰が落ちてもVn1が弾いている限りは大丈夫でしょう。Cまで行けばVn1がソロに入りますからもう大丈夫です。 K170-4-66


K170-4-3


K170-4-66