演奏のスタンスによる楽曲の分類

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作曲家が作品をどのような意図で作曲したかということは演奏上重要なことです。バッハの無伴奏チェロ組曲も練習曲として扱われていましたが、カザルスの演奏スタンスがこの組曲を本来の位置に復活させたといえます。

その意味で曲に対する取り組み方、つまり演奏の基本スタンスを定めることは重要です。そのために楽曲を次のように分類しました。

 下記の分類は感覚的に把握できますが、サロン用や練習曲と思われていた曲が実はかなり丹念に工夫されカテゴリー1に属している場合もあります。決して一般論をそのまま受け止めることなく自分で演奏し楽譜を検証してみて最終的にどのような演奏スタンスを取るかを決定してください。

その逆にかなりしっかりした曲を結婚式のバックグラウンドとして使いたい場合もあると思います。自分達が演奏する目的にふさわしい演奏解釈をすることは大事なことだと思います。

 

1.芸術作品として意識された作品

            1.作曲家が自己の真価を問うた作品

作曲家の代表作とされる作品に多い。細部まで磨き上げられており厳密な作品解釈が成り立つ領域の作品。基本的な形式に基づきながら変形を加えたり、まったく新しい工夫を提案している作品も多い。また形式的に非常にすっきりしているが、その形式的美しさを出すために多くの独創的な作業を行っている曲もある。複雑な作品が多いため解釈も多様化する。古典派の重要な作品、ロマンは以降の多くの作品がこのカテゴリーに属する。

例:ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 (全曲)
  ラヴェル 弦楽四重奏曲 へ長調など

            2.形式に従って作曲された作品

ソナタ形式などの形式を原則どおり適用して書かれた作品で、形式が本来持つ美しさの強調が前提条件になっている場合が多い。古典派の作品にはこのカテゴリーの作品が多い。伝統的かつ個性的な演奏解釈の確立にはかなりの力量が必要になる。

例:モーツァルト ピアノソナタ ハ長調K.545など

            3.それ以外の作品

作曲家が真剣に自己表現をした小品などをさす。非常に丹念にかかれているが構造的には単純な場合が多い。実験的な小品もこのカテゴリーに属する。演奏解釈はテーマの表現法、フレーズの解釈、色彩の表現などが中心になってくる。

例:ブラームス インテルメッツォ Op.117など

2.社交用にかかれた作品

           1.サロン用の作品

バロック音楽に代表される作品群やサロンでの演奏を意識された作品群であり聴衆に対する効果を主眼にしている場合が多い。技巧に重点を置いたり、難解さをさけた妥協的作品が多い。聴衆に対するアピールという点に力点が置かれる。

この作品群については、どのような態度で作品に接するかを検討する必要がある。厳格な演奏をすること事態が間違いかもしれないので注意をする必要がある。

また楽しく書かれた作品にカテゴリ1の作品に対する厳格な解釈を適用して愚作と判断してしまうのも大きな間違いである。

3.実用作品

           1.実用作品

                      行進曲、舞踏音楽、練習曲などのような実用を考慮された作品。熱心な聴衆を意識       していないことが特徴

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