接続部の技法に関する議論

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経過部P2(95−134)に付いて考察しておきたいと思います。少し長くなりますが楽譜全体を掲示します。

分析的に見るとこの部分は、冒頭のヴィオラの音型から導かれたものだと思います。つまり下降する半音です(G-Fis)。

この音型をから始まるパッセージがまずポリフォニックな立体性で元気良く始まります(95小節Vc1)。8分音符の刻みの形態も保持しています。G-Fisだけに共通性があるだけですのでこのパッセージが序奏の音型から導かれたというのは普通は無理です。しかしこの経過部ではブラームスの力の強さを思い知らされます。ここは紛れも無く冒頭の音型から導かれています。だんだん分ってきて最後には思い知らされます。

このパーセージでP2,P2a、P2aと展開した後、P2bではVa2/Vc2で演奏される(G-Fis-G)を連想させる音型にのって半音で下降する音型が拡大された格好(111小節から114小節、Vc1でアクセントをつけて提示される)ので演奏されます。そして127小節では冒頭のヴィオラの音型が倍に拡大された形で完全に表れます(Cis- His- Cis- His ----)。

P2はG-dur非常に複雑な和声進行を経て属調である二長調に落着き第2主題に接続します。分析表を見て分るとおりこの曲の調性上の構成はいたって平凡ですがこの経過部は、この点を見事に補っています。

私はわずか2音で且つ単純な半音的な下降音型を動機だという考え方は、思い入れが強すぎてあまり好きではありません。ただ上記の部分についてはブラームスが意図したとしか考えられません。一見関係なさそうなパッセージが序奏の音型そのものに変化して行くさまには凄まじい実力を感じます。

さて、演奏はどのようにするかですがP2のパートではポリフォニックな特徴を出すためにsfを強調してすぐ音を普通の強さに戻す。P2aから音型の拡大型が表れます。(ブラームスは丁寧にアクセント記号をつけています)これは強調すべきでしょう。そしてP2bに入ると徐々に冒頭の音型が姿を整えてくること、確実な音程による和声進行の強調か主眼になります。127小節からのVa2,Vc2はブラームスに敬意を表してこれでもかというほどはっきり演奏してはいかがでしょう。この部分で上手く離反すればするほど、第2主題は美しく響きます。

随分長く書き綴ってきましたが、最大の接続部である展開部について一言も書いておりません。詳述を始めますと非常に長くなるということと、私の提案する楽曲解釈法にご納得頂いた方にはこの曲の展開部の演奏解釈はほとんど自明だと思いますので割愛させていただきます。

また、提示部の最後にある反復記号ですが展開部が第1テーマから始まっているので特に反復をしなくても良いと考えております。

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