テーマの性格について

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第1主題は扱いにくいと思います。構成は4+2+4+4=14小節で多少いびつです。また一つの楽器で完全に演奏されませんから不安定に聞こえます。和声もG dur >g moll>Es dur>G durのように移ろっています。みなG音を共通にもっているのが特徴でしょうか。

全体として長調か短調かもはっきりつかめません。このテーマは歌謡的でもないし器楽的というわけでもありません。もちろんテーマを動機に分解して多用しておりますが、重点はこのテーマ全体がもつ独特の感じです。何も表現していないようではっきり何かを表現しております。強烈な個性を持つ素晴らしいテーマです。

フレーズに強いて分ければ(4)+(2+4)+(4)であり2小節の部分がそれに続く4小節に従属するかなという具合にしか纏められません。問い、応答という風に考えれば、(4)+(2+4+4)でしょう。

ではどのように演奏すれば良いかということになりますが、楽譜通りに弾くことだと思います。その結果として響くなんとも纏まりの無い音の連なりこそがブラームスが意図したテーマだと思います。テーマと同様に重要なヴィオラの音型についても、そのまま響く音を出すことを要求されていると思います。

第4小節目の変ロ音にテーマとしての頂点がありますが、ここは輝かしいヴィブラートのかかった音でしょうか。E線の音でしょうか、A線の音でしょうか。1−4小節は上昇する音型、6−7小節は下降音型、8−10小節は上昇音型、11−14小節は下降音型。だから上昇音型はクレッシェンド気味に、下降音型はデクレッシェンド気味に弾いたらどうでしょう。不時着寸前の遭難機みたいですが、これも良いかもしれない。などと考えてみてください。

この例では余りテーマの扱い方について議論ができませんでしたが、通常は随分あれこれと議論の対象になります。

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